LIFULLが日建設計、日建設計総合研究所、CULUMU、東京大学 と暮らし・まちづくりのインクルーシブデザインに関する 産学連携、共同研究を開始

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共同研究開始の発表会の様子(筆者撮影)

株式会社LIFULLは株式会社日建設計、株式会社日建設計総合研究所、インクルーシブデザインスタジオCULUMU、東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 松田雄二研究室とともに、暮らしやまちづくりにおけるアクセシビリティとインクルーシビティの向上を目指し、住宅に関する課題やニーズ調査を起点とした共同研究を開始することを発表した。インクルーシブデザインとは、障害のある方や高齢者、外国人など従来のデザインプロセスから取り残されがちな多様な人々を企画などの最初の段階から巻き込んで一緒に作り上げていくデザイン手法。

まず住宅分野での知見を蓄積し、将来的には都市空間や社会全体の包摂性を高める仕組みづくりへと展開することを視野に入れている。また、研究成果を活かし、共同研究チーム以外の多様な専門家や当事者、企業とも連携しながら活動を広げ、よりよい暮らしとまちづくりの社会実装を推進する予定だ。

「住まい・まちづくりのインクルーシブデザインに関する実態調査」を実施。生活者の住まいにおけるバリアフリーに関する意識、実態について全国691名(うち本人もしくは家族に障害がある 160名)に調査した。

バリアフリーの必要性 障害のある当事者が約57%、一般層は約28%

バリアフリーの必要性について

障害のある当事者層にバリアフリーの必要性について質問したところ、57.1%の人が「必要だと感じる」(「非常に必要だと感じる」「ある程度必要だと感じる」の合計)と回答。一般層では「必要だと感じる」と回答した割合は28.3%に留まり、45.7%の人が「必要だと感じない」(「あまり必要だと感じない」「全く必要だと感じない」の合計)と回答。「必要だと感じない」が17.4ポイント上回った。また、 障害のある当事者であっても約58%が現在バリアフリーではない住宅に住んでいた。

ニーズがありながらもギャップが生まれてしまう背景や原因をレポート「住まい・まちづくりのインクルーシブデザインに関する実態調査」にて公表している。

調査レポート「住まい・まちづくりのインクルーシブデザインに関する実態調査」
https://lifull.com/news/45117/

高齢者や障害者は、心身の変化とともに住宅に住み続けられなくなることがある。この研究では、そのような利用者を「住宅弱者」と捉え、住宅弱者が住宅を選択する際に、求めるニーズを調査し、ニーズの体系化(ユーザーごとのニーズの分類を想定)を実施。建て売り住宅や集合住宅の供給者に適切な情報を提供するとともに、利用者(住宅弱者)も適切な住宅を選択することが容易になることを想定している。

住宅弱者のニーズ調査・・・高齢者や障害者など多様な背景を持つ人々を対象にヒアリングや訪問調査を実施し、住まいや暮らしに関する困難や要望を収集。

ニーズの整理・・・収集したデータを分析し、利用者の特性やライフステージごとに分類・整理することで、多様なニーズの全体像を明らかに。この体系化は住宅にとどまらず、都市空間における多様な利用者ニーズの把握にも応用可能。

多様な専門性を持つ組織が連携し、利用者や当事者を含む幅広いステークホルダーと共に推進することで、初めて実効性ある成果へとつながる。

大学にとっては、実際の利用者の声や活動を研究に反映できること、社会実装までのスピードを高められること、さらに成果を市場に浸透させられる可能性が広がるというメリットが。企業にとっては、公共圏で通用する学術的な正当性を担保しながら、多角的な視点やデータに基づいた活動が可能となる。また、調査、設計、流通、評価といった一連のプロセスを学術的基盤と組み合わせて推進することで、社会実装における推進力を強化できる。

今回の共同研究は、こうした双方の強みを融合し、よりよい暮らしと都市環境の実現に向けた共創型プロジェクトの第一歩となる。

 

発表会見の中で感じたのは、インクルーシブという定義の難しさ。登壇者の中で「多様性といっても人によって見方が違う」という発言があった。高齢者はもちろん、視覚障碍者や聴覚障碍者、歩行困難者など課題は様々。様々な声を拾い上げて、暮らしやすい社会を創ることが大切だ。

バルセロナなど海外の取り組みも紹介されたが、日本にあった進め方が重要だ。お金をかけて作った公共施設や再開発ビルが利用者が少なくガラガラといったケースもある。これまで、住宅は民間主導で作られてきたが、社会にとっての重要性を考慮して、公共財へ予算配分をすべきだろう。