国土交通省より、令和6年都道府県地価調査が発表された。全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅が拡大。地価の上昇が続いていることを示した。しかし、大都市圏と地方圏では、動きに大きな差異があり能登半島地震の被災地は、大きく地価が下落している。
まず、 三大都市圏では、 全用途平均は4年連続、住宅地は3年連続、商業地は12年連続で上昇。それぞれ上昇幅が拡大。地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇。全用途平均・商業地は上昇幅が拡大し、住宅地は前年と同じ上昇率となっている。
また、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の 地方四市では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも12年連続で上昇したが、上昇幅は縮小している。その他の地域では、住宅地は下落が継続しているが、下落幅は縮小し、 商業地は2年連続で上昇。上昇幅が拡大し、全用途平均は平成4年以来32年ぶりに上昇に転じている。大都市圏だけでなく、地方圏でも上昇幅が拡大又は上昇傾向が継続するなど、全体として上昇基調が強まっている。
低金利環境の継続などにより、引き続き住宅需要は堅調であり、地価上昇が継続している。特に、
大都市圏の中心部などにおける地価上昇傾向が強まっている。また、人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアムに加え、移住者用住居などの需要が増大し、引き続き高い上昇となった地点が見られる。
主要都市では、店舗・ホテルなどの需要が堅調。オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから、地価上昇が継続している。さらに、外国人を含めた観光客が回復した観光地では、高い上昇となった地点が見られる。中でも、都市中心部付近では、マンション需要との競合により、引き続き高い上昇となった地点が見られる。さらに、再開発事業等が進展している地域では、利便性や賑わいの向上への期待感などから、地価上昇が継続している。
大手半導体メーカーの工場が進出する地域では、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の工場用地や店舗等の需要も旺盛となっており、住宅地、商業地、工業地ともに高い上昇となっている。さらに、eコマース市場の拡大による大型物流施設用地等に対する需要を背景として、高速道路等へのアクセスが良好な工業地では、引き続き高い上昇となった地点が見られる。
なお、基準地価の住宅地上昇率トップは、《沖縄県 国頭郡恩納村字真栄田真栄田原36番外》の+29.0% 。基準地価の住宅地下落率トップは、《石川県 輪島市河井町壱五部90番56外 》の-14.8%。基準地価の商業地上昇率トップは、《熊本県 菊池郡大津町大字室字門出176番4 》の+33.3%。基準地価の商業地下落率トップは、《石川県 輪島市新橋通八字2番18》の-17.1%だった。
東京圏は、商業地・住宅地とも上昇 再開発進む渋谷区や外需旺盛な台東区
首都圏では、アフターコロナによる都市部の商業・オフィス・住宅需要の回復が顕著だ。商業地トップの上昇率は、インバウンド需要が急回復している台東区浅草エリアの《台東区西浅草2-13-10》の25.0%上昇 。次いで、オフィスやコンサートホールなどの開業が相次ぐ横浜のみなとみらい21地区の《横浜市西区みなとみらい4-4-5》の21.6%上昇。3位が、渋谷サクラステージの開業など再開発が活発な渋谷エリアの《渋谷区円山町22-16》の20.8%の上昇。
東京23 区全体では、9.7%上昇で、前年の5.1%上昇から伸びが拡大。全ての区で上昇幅が拡大している。タワーマンションなどの高度利用可能な場所や再開発等によりさらなる発展期待のある地点が目立つ。上昇率の大きい順に、渋谷区の13.1%上昇(前年4.5%上昇)、台東区 12.5%上昇(前年7.0%上昇)、文京区の11.7%上昇(前年6.8%上昇)となった。 東京都下においても主要駅のある商業地需要は旺盛で、立川市 7.8%上昇(前年4.1%上昇)、国分寺市 7.3%上昇(前年6.2%上昇)、府中市 7.3%上昇(前年4.1%上昇)となり上昇幅が拡大している。
埼玉県では、さいたま市では、4.5%上昇(前年3.7%上昇)。全 10 区のうち、再開発等によりさらなる発展期待のある大宮区など 6 区で上昇幅が拡大、岩槻区など 3 区で上昇幅が縮小となった。JR 京浜東北線及び埼京線沿線で都心への接近性に優れる戸田市、川口市、蕨市では店舗需要のみならず、旺盛なマンション用地需要との競合もあり、上昇幅が拡大している。
千葉県では、東京都に隣接・近接する浦安市、市川市、船橋市、松戸市、柏市においては、店舗・オフィスの需要が主要駅で堅調。旺盛なマンションの用地需要との競合により、上昇が継続し、上昇幅が拡大した。千葉市では、6.7%上昇(前年4.6%上昇)し、全区で上昇幅が拡大した。中央区では、7.5%上昇(5.5%上昇)となった。千葉駅周辺の商業地では、人流増加に伴う収益性の向上等により、店舗等需要は堅調であり、上昇が継続し上昇幅が拡大した。
神奈川県では、東京都に隣接する川崎市が、8.4%上昇(前年5.6%上昇)。全7区で上昇幅が拡大となった。横浜市では、7.4%上昇(前年5.3%上昇)。全 18 区で上昇幅が拡大した。みなとみらい地区といった中心部では、店舗・オフィス需要は堅調であり、神奈川区 8.6%上昇(前年7.0%上昇)、西区 9.5%上昇(前年7.6%上昇)、中区 9.7%上昇(前年5.5%上昇)となっている。
東京23区住宅地は、全区上昇幅が拡大 中央区、渋谷区、目黒区がトップ3
首都圏の住宅地も東京23区が堅調。東京23 区全体では、6.7%上昇(前年4.2%上昇)。全ての区で上昇幅が拡大している。上昇率が大きい順に、中央区 12.4%上昇(前年4.4%上昇)、渋谷区10.2%上昇(前年4.1%上昇)、目黒区 9.6%上昇(前年5.3%上昇)。住宅需要が堅調で、都心区及びこれに隣接する区の利便性や住環境に優れた地域では、マンション、戸建住宅ともに需要が旺盛で、上昇幅が拡大している。
なお、首都圏の住宅地上昇率上位は、1位《新宿区市谷船河原町19番8外》の+17.1%。2位が《流山市おおたかの森南1丁目27番3》の+15.9%。3位が《渋谷区神宮前三丁目13番13 》の+15.9%だった。流山市は、4位に《流山市おおたかの森西1丁目28番4外》入るなどトップ10に4地点も入っており子育て世帯が住みやすい街として、注目を高めているようだ。
商業地、住宅地ともに上昇し、建築費も高止まりしている中では、当面は新築マンションや新築戸建てなど住宅価格の下落は、考えにくいの実情だ。直近では、株価の調整や円安に歯止めが掛かるなど需要面やコスト面での環境が変わりつつある。住宅価格の動向は、短期的に見るのではなく10年後、20年後を踏まえて、長期的に考えたほうが良いだろう。
将来価値の高い街は、都市計画を見れば予想がつく 流山も2011年に推薦
将来価値の高い街は、都市計画を見ればおおよそ予想がつく。都市計画マスタープランなどによって、街づくりの方向性は示されており、じっくりと街の発展を待つのみだ。筆者は、2011年に『絶対見つかるおトクなマンション購入ガイド』(メディアソフト社)の中で、『資産価値抜群!話題のオススメエリア』という記事の執筆を担当し都心5区を除いたおすすめエリアとして12のエリアを挙げている。その中には、豊洲や押上、北千住など今や人気になった準都心エリアやみなとみらい、さいたま新都心、武蔵小杉などパワーカップルが狙う郊外エリアの街も入っている。
新築マンション供給を踏まえて、東京都6、神奈川県3、埼玉県2、千葉県1の計12エリアを紹介しているが、千葉県で挙げたのが今回住宅地上昇率で首都圏2位となった流山おおたかの森だ。13年前のことで、どのくらいの読者が街選びの参考にしていただけたかは分からないが、紹介した12のエリアは、全て資産価値が大きく上昇している。少しでも役立っていればうれしい。
紹介した街に共通するのは、都心へのアクセスはもちろん生活関連施設が充実し自然やレジャーなど多彩な魅力があること。そして開発の伸びしろがあることだ。『人生は、壮大な暇つぶし』と言った人がいたが、ライフステージが変化する中で、街を起点に豊かな暮らしができるかが重要な要素だろう。そういう意味では、再開発で街が生まれ変わってきている新小岩や埼玉県の和光市、千葉県の本八幡などもこれからの狙い目かもしれない。
資産価値が上昇している街は、街の賑わいや魅力が増すことで暮らしやすさもアップしているケースが多い。人口減少が迫る中で街の将来性の見極めは、今まで以上に重要になるだろう。