2025年2月の首都圏中古マンションは、成約件数が大幅増で約4年ぶり水準 その要因は?

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港区のマンション群(筆者撮影)

公益財団法人 東日本不動産流通機構 から月例速報「2025年 2 月度の首都圏中古マンション件数」が発表されました。成約件数は前年比プラス 23.9%の大幅増となり、4 ヶ月連続で前年同月を上回りました。成約㎡単価は前年比で 4.8%上昇し、20 年 5 月から 58 ヶ月連続で前年同月を上回る結果に。成約価格は前年比で 2.6%上昇し、4 ヶ月連続で前年同月を上回っています。なお専有面積は前年比で 2.1%縮小しました。

地域別動向では、成約件数はすべての地域が前年比で増加が続き、千葉県は 23 年 11 月から 16 ヶ月連続で前年同月を上回りました。成約㎡単価は東京都区部と千葉県が上昇し、東京都区部は 20 年 5 月から 58 ヶ月連続で前年同月を上回りました。

首都圏中古マンション件数の推移(出典 東日本不動産流通機構)

中古戸建住宅の売れ行きも堅調で、成約件数は前年比プラス 44.8%の大幅増。成約価格は、3,920万円でほぼ横ばいとなっています。また、東京都区部は 24 年 1 月から 14 ヶ月連続で前年同月を上回っています。

成約件数の大幅増加の要因は、日銀の政策変更による金利上昇か

2025年2月度の中古マンションの成約件数は、昨年の3月の直近で最も多かった3,810件を上回ります。4,000件を超えるのは、2021年3月度の4,228件以来の水準。当時を振り返ると、コロナ禍の不透明感で停滞していた不動産マーケットが一気に動いたタイミング。2025年2月度の約4年ぶりとなる4,000件超の成約件数は、行動を促す何らかの要因があったと考えるべきでしょう。

首都圏中古マンション ㎡単価の推移(出典 東日本不動産流通機構)

筆者は、2025年1月に行なわれた日本銀行による政策金利の引上げが、マーケットを動かしたのではないかと思います。中古マンション流通市場では、売り手の売却ニーズと、買い手の購入ニーズがマッチして契約が成り立ちます。政策金利の引上げにより2025年4月以降の変動金利の上昇がほぼ確実になる中で、金利が上がる前に購入したい買い手と、金利が上がる前に売りたい売り手のニーズが嚙み合ったのでしょう。マンションだけでなく、中古戸建住宅の成約が伸びていることもこのことに起因していると思われます。

10年物日本国債の金利の推移

 

イールドカーブコントロールを止め、ある程度マーケットに委ねられている長期金利の動向は、上昇トレンドが続いており1.5%を上回りました。今後、日本銀行が保有している国債を減らしていくので長期金利の上昇は、さらに続くかもしれません。

いっぽう、短期金利は政策金利が依然として0.5%と低水準であることからデフレ脱却からインフレ懸念に移りつつある中、慎重に引き上げていくことが予想されます。金融緩和のマイナス影響は、建築費の高騰など建設業界に特に顕在化しており再開発事業や公共施設の建設が相次いで見直されています。資材価格や人件費の高騰もありますが、過度な金融緩和による円安が大きな要因であることは否めません。

では、他国の政策金利を見てみましょう。

アメリカ10年物国債利回り 約4.3%  アメリカ政策金利 4.25%-4.5%
台湾10年物国債利回り 約1.6% 台湾政策金利 2%
中国10年物国債利回り 約1.9% 中国最優遇貸出金利1年物 3.1%

インフレ傾向にあるアメリカなどは、鎮静化のため政策金利を引き上げており、10年物国債の金利を上回る水準になっています。異次元の金融緩和から通常の金融政策へと移行期にある日本ですが、同じような水準まで引き上げるとなると、1.5%まで政策金利が引きあがることになります。現在は、0.5%ですから変動金利が今後さらに上昇する可能性は高いのではないでしょうか。

湾岸エリアのタワーマンション群(筆者撮影)

5年前と比べ、円に対し元は約35%、シンガポールドルは約30%、台湾ドルは約20%上昇しています。近年、都心部で外国人投資家のマンション購入の動きが顕著になっていますが、もしも今後日本政府が徐々に金融緩和を修正し円高傾向に振れる可能性が高いのであれば、為替差益も狙えるわけで理に適っています。仮に、物件価格が2割下がったとしても、為替が2割円高に振れれば保有期間のインカムゲインは取れていますので、収支はプラスになります。いっぽうで、円安の時に外国の不動産に投資するのは注意が必要です。

筆者は、これから日本の政策金利がさらに上昇し円高傾向にふれるのではと考えています。日本の輸入の約4分の1は、中国からの輸入です。かつては、15円台だった元・円レートが今は20円台。物価が上がるのは当然でしょう。インフレ傾向なのに金融緩和が続く日本と、デフレが懸念されているのに政策金利が高止まりの中国。両国とも様々な事情がありますが、これが修正されない限り外国人投資家の日本の不動産買いは、当面続くのではないでしょうか。

 

編集付記  日本銀行の金融政策が正常化に向かいつつあり「金利がある世界」がやってきました。普通預金の金利も上昇し、預金口座を眺めると、かつては10円単位だった利息が千円単位に。バブル崩壊後の過剰債務・過剰設備・過剰雇用によって物価や経済は停滞しましたが、新卒入社の初任給の報道を見ると隔世の感があります。ルールが大きく変化する中、住まいの在り方も変わっていくのではないでしょうか。