都市部の好立地でのマンション供給が難しくなる中において、地権者との等価交換事業によるマンション供給が目立っています。立地の希少性の高さもあり、早期に完売している物件もあり、その多くは地権者が1人から数名のプロジェクトです。
街の再生事業として代表的な手法である等価交換事業ですが、権利者全員の合意が必要になるため関係者が多いほど実現性が低くなります。歴史ある中心市街地は、狭小な敷地や私道、借家人など関係者が多く一定規模での事業化は容易ではありません。
地権者38人の合意形成で11階建て総戸数166戸のマンションを駅3分で実現
旭化成レジデンスが築地エリアで進める分譲マンション事業「アトラス築地」は、東京メトロ日比谷線「築地」駅徒歩3分の敷地面積1914.70平米の地に等価交換事業で誕生する総戸数166戸(うち店舗6戸)の大規模レジデンスです。従前地の建物は37棟で地権者数は38人、私道や借家人などをあわせた関係者数は100人超にも上ります。
江戸時代からの町割で、木造の長屋が多く昔ながらの路地が残る一方で老朽化した家屋が多く災害時の倒壊や延焼が課題でした。
「私道」を廃道とするため、地区外の私道所有者も含め、合計100名以上の関係権利者からの同意書の取得。相続未登記のまま第三世代まで受け継がれた敷地や、底地・借地の権利関係が複雑化した敷地の整理。市場関係の借家人(テナント)の立ち退き計画や、代替店舗の確保など実現不可能とも思える調整を実現できたのは、旭化成不動産レジデンスの豊富な経験が活かされたからでしょう。
約125戸分譲予定 2019年12月販売開始予定、2021年10月竣工予定
「アトラス築地」の現地は、4方向道路に面したほぼ整形な敷地。駅徒歩3分とは思えない静かなロケーションです。「築地」駅すぐにある築地本願寺が近く築地川公園や隅田川などの憩いのスポットも身近に。
昔ながらの住宅街で、買い物施設も豊富にあります。築地場外市場も身近にあり豊洲に移転した築地市場跡地も近く将来性も感じる場所です。
総戸数166戸のうち店舗が6戸で住戸は160戸。うち約125戸が分譲予定となっています。地権者の多くが等価交換によって取得した建物を保有する予定。建物は、地上11階地下1階建てで施工は、松井建設が担当します。
販売開始は、2019年12月予定で竣工は2021年3月予定です。「銀座」駅も身近な「築地」駅徒歩3分の大規模レジデンス。開放的な4方向道路に面したロケーションにこのスケールで誕生するだけでも魅力を感じます。
築地の街並みに沿った重厚感ある外観フォルム、埋蔵文化財調査で発掘した木材を共用部の部材に使うなど歴史の継承にもつとめるとのこと。プロジェクトの正式発表を期待したいと思います。
【編集後記】
地震の多い日本において、災害に強い街づくりは喫緊の課題だと思います。求められるのは街全体の安全性の確保ですが、歴史ある中心市街地はそこに住まう家族や資産保有者の様々な考えがあり方向性が定まりにくいことも多い。コーディネーターの調整力が重要になってきます。
災害がいつ起こるか予測は不可能ですが準備は可能。建て替えニーズがあってもまとまるのは10に1つもないとも言われますが、歴史を継承しつつ安心して暮らせる街づくりを進めていくことが大切だと思います。
追記:11月1日 正式物件名を「アトラス築地」に修正しました。