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新型コロナウィルスが不動産市場に及ぼす影響 

新型コロナ前の都心の風景 コラム&インタビュー
新型コロナ前の都心の風景

新型コロナウィルスの感染が急拡大しています。2020年4月1日、東京都では新たな感染者が66人発生。都内の感染者数は586人になり、感染経路の分からない患者数が増加傾向にあり感染爆発が危惧されています。全国の新規の感染者数も265人(NHK発表 午後10時半時点)と急拡大しています。

これを受け、東京都では都立の学校の休校をGW明けの5月6日に延長することを決定しました。感染拡大は、東京都だけでなく神奈川県、千葉県、埼玉県の首都圏エリアや大阪府、京都府、兵庫県のある関西圏、福岡県でも見られ感染が収まる状況にはありません。

ニューヨーク市やパリ市などの状況を見ると感染拡大が本格化するのはこれからですので、厚生労働省が明示している「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」を避けることが必要になります。

2020年4月1日の日経平均の終値は、前日比856円安の18,065円。ホテルや飲食業などの景況感は大幅に悪化しており、日本銀行が行う統計調査である短観(企業短期経済観測調査)では、7年ぶりにマイナスになりました。

不動産市場でも新型コロナウィルスの影響は出始めており、上場不動産投資信託(上場リート)の株価は大幅に下落。上場している不動産関連企業の株価も軒並み下落しています。欧州やアメリカでの感染拡大が3月に入ってからでしたので、中古マンション売買など実態マーケットでの影響は現段階では限定的ですが、被害拡大がこのまま続けば価格動向への影響も避けられないかもしれません。

雇用悪化は、住宅需要を減退させる 固定資産の売却が始まる可能性も

各所で集団感染を引き起こし高い感染力と約20%が重症化する新型コロナウィルスに対し、パリ、ロンドン、ニューヨークといった都市で被害が拡大しています。集住することで豊かなライフスタイルを過ごせる都市化は、全世界で進んでいます。全世界で死者数が1万人を超え、21世紀最大の自然災害ともいえる新型コロナウイルスウィルスは、都市が万能ではないことを知らしめています。

検査薬が不足し、治療薬やワクチンが無い今は、感染拡大を抑えつつ治療薬やワクチンの開発を待つしかありません。感染の終息が見えない中で、今後の不動産市場を予測することは極めて困難ではありますが、希望も込めて東京五輪が延期になった2021年夏ごろまでにコロナウィルスが世界の大半で終息の目途が立つ想定で予測したいと思います。

まず、主要都市の住宅需要の減少は、短期的には避けられないでしょう。ここにきて求人倍率が低下してきているように雇用の悪化は住宅需要には大きなマイナス要因です。人を介する飲食・物販などのサービス業の収益だけでなく、世界経済の悪化から上場企業の業績も下振れしそうです。

また、国内線・国際線や新幹線の利用者が大幅に減少しているように安定収益を上げていた企業の業績も急速に悪化しています。すぐに資金繰りが厳しくなるような企業は、上場企業では少ないと思われますが、資金流動性を確保するために保有不動産を売却し現金化する動きは、今後徐々に増えてくるのではないでしょうか。

また、都心部で急速に悪化しているのがホテルの稼働率です。ホテル系の上場投資信託の中には、この1カ月で価格が半値になったものも出てきていますが、稼働率の低下による収益性の悪化は都心エリアのホテル需要を減退させ都心の地価にも影響が出てくるでしょう。

また、飲食店や物販店などが入る商業ビルの収益性も今の状況が続けば低下が避けられません。東京五輪を見込んだ2020年は各所で商業施設がオープンしますが、新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえると厳しいスタートにならざるをえないでしょう。

感染拡大の中で、今後不動産取引も停滞することが予想されますが、まず影響を受けそうなのが都心エリアの高額中古マンションマーケットです。高額所得者すべてが、株式投資をしているわけではないので、世界的な株価下落の影響を受けてない方もいるでしょう。しかし、先行きが不透明な中では資金的な余裕がある人ほど購入には慎重になりそうです。プレミアム性を感じる新築マンションならまだしも、希少性がそれほどでもない高価格帯の中古マンションの販売は難しくなってくると思われます。

また、郊外の戸建てマーケットも厳しくなりそうです。都下や千葉、埼玉エリアなどの郊外エリアの戸建ては、すでに30代人口が減少する中で1次取得者のボリュームが減りつつあります。景況感の悪化は、需要の縮小にもつながり価格動向も弱含む可能性が高いでしょう。

新築マンション価格の影響は限定的 世界的な景気後退なら下落の可能性も

新築マンション価格の影響は、リーマンショック時と比較して供給戸数が少ないため限定的と思われます。長期金利が急上昇し、住宅ローン金利が高かった当時と比べ、各国の資金供給が素早く住宅ローン金利は低水準で安定しています。住宅ローン控除の拡充など購入支援施策も手厚く、立地や商品企画、価格のバランスの取れた新築マンションは、今後も一定の支持を受けると思われます。

新築マンション価格は、土地価格と建築費の高低で決まってきます。経済の停滞が続けば今後土地価格が下落に転じる可能性があります。また、建築費は材料費、労務費、輸送費などで決まってきますが、原油価格が暴落し雇用情勢が悪化する中では工事費は、弱含む可能性が高いと思います。

これから土地を取得して、新築マンション市場に供給されるのは早くても1年後だと思いますので、原価ベースで価格が下がるのは2年後あたりと予想されます(その時の需給に左右されるので、原価が下がったとしても価格が下がるわけではありません)。

今後の指標の注目は、2020年1-3月の地価ルックレポートと4月上旬に(公財)不動産流通機構から発表される3月の不動産流通市場の動向。2月の成約状況は堅調でしたが3月の動向は注視したいと思います。

新型コロナウィルスによってイタリアでの死者が1万人を超えているように、日本の状況は予断を許しません。「私は大丈夫」ではなく、「私こそ危険」と思ってできるだけ密集地域を避けることが重要です。どんなに良い住宅も人が住んでこそ。一人一人が命を大切にすることが、新型コロナ後の未来に欠かせないことだと思います。

 

【編集後記】

フランスのマクロン大統領が「これはウィルスとの戦争だ」と述べていましたが、1国だけ封じ込めてもウィルスの危機は去りません。そう考えると、数年から数十年にわたる長期戦になるかもしれません。

ウィルスによって集まることがリスクになった今、テレワークなど新しい動きも出てきています。クルーズ船での複数のウィルス感染事例を見ると、平時に戻ったとしても以前のようなインバウンド需要がもどるにはかなりの期間を要するかもしれません。

筆者は2月下旬以降、新型コロナウィルスの感染拡大に際し通勤時間帯の電車移動を避けています。また、感染拡大を避けるため人と会うときはマスクを着用し、モデルルーム訪問などの取材活動を自粛してきました(記事の公開ペースも縮小しました)。これからも感染拡大が収まるまで、不要な外出は避けたいと思います。感染拡大は、これからだと思いますが読者の皆様もくれぐれもご留意ください。