日鉄興和不動産株式会社は、2022 年 7 月に新規参入を発表したレジデンシャルホテル事業「&Here(アンドヒア)」より、東京・上野に第 1 号ホテル『&Here TOKYO UENO(アンドヒア東京上野)』(全 145 室)を、2024 年 3 月 15 日(金)に開業する。日鉄興和不動産が初めて開発と運営を手掛ける長期滞在対応型ホテル。運営は、2022年 7 月に設立した日鉄興和不動産 100%出資子会社の NSKRE ホスピタリティ株式会社が担う。現地を訪ね、ホテルの特徴を紹介する
事業計画の背景は、旺盛な長期滞在グループ客のインバウンド需要
『&Here TOKYO UENO』は、訪日外国人が多く集まる東京の中でも人気のある上野に、ファミリー層の長期滞在などを想定し設計された。上野は東京国立博物館や上野動物園といった文化・レジャー施設に加え、多彩な商店が連なるアメ横など、訪日外国人の好む日本文化を体験できるスポットが集中する場所。北側エリアは上野公園の自然に面する風光明媚なエリア(FOREST SITE)、南側エリアは江戸時代からの伝統工芸などを取り扱う老舗店などが軒を連ねるエリア(CULTURE SITE)と趣が異なり、それぞれのエリアイメージをコンセプトにデザインされている。
2023 年 4 月の新型コロナ水際措置撤廃以降、訪日外国人客数は年間累計 2,500 万人を突破し、インバウンド需要が順調に回復。訪日客の約5割が 3 名以上のグループで利用、また約 8 割が滞在日数 4 日以上と、分室せずグループ 1 室で長期滞在できるホテルおよび客室のニーズが高いことが調査で判明した。また、国内においても、リタイアしたシニア世代を中心に、3 世代旅行など多人数での旅行が増加する機運がある。
近年キッチンやランドリーなどの付加価値を備え、暮らすように滞在できる、ホテルとサービスアパートメント双方の利点を合理的に取り入れた「レジデンシャルホテル」が注目を集めている。国内主要都市のホテルにおいては、3 名以上同時に宿泊できる客室が不足しているのが現状。同社は、訪日外国人や国内ファミリー、グループ旅行など、長期・多人数での宿泊ニーズをとらえたレジデンシャルホテルブランド「&Here(アンドヒア)」の開発、運営を決定。ビジネスホテルでもシティホテルでもない、ホテル滞在中だけでなく、旅全体の快適性や心地よさを追求した新しいカテゴリ「SPECIAL DAYS HOTEL(スペシャルデイズホテル)」として、日常の延長ではなく、「特別な日々」を提供するホテルを目指している。
レジデンシャルホテルの新ブランド「&Here(アンドヒア)」は、「 た の し む = ENJOY 」 と 「 く つ ろ ぐ =RELAX」、そして、家族や友達などゲストが大切にしている方たちと過ごす大切な時間など、多くの大切なものを「引き寄せ、結びつける=&」場所となることを表している。ホテル内にとどまらず、さまざまな「楽しむ」時間と「くつろぐ」時間を提案し、その上で、「特別な思い出」を得ることを理想に。ロゴマークにある「&」は、旅行者と地域、旅行者とさまざまな体験、旅行者とスタッフを一つに結ぶホテルであることを表現した。
旅全体の快適性を高めるための「&Here」の3つのキーワード
“Enjoy + Relax = only here”「“たのしむ”と“くつろぐ”を引き寄せ、特別な日々を届けるホテルへ」
上野の豊かな緑と、モノづくり文化が溢れたエリアに位置
『&Here TOKYO UENO』は、北側は不忍池や上野公園など都内でも有数の緑豊かなエリア(FOREST SITE)、南側は伝統工芸やモノづくり文化に溢れたエリア(CULTURE SITE)に位置。ホテルのコンセプトを“上野公園の社“とし、文化の社「上野公園」に隣接する安らぎを感じる森を創出
し、地元文化に触れ合える場を提供する。不忍池南端に位置し客室から不忍池、上野公園を望める恵まれた立地。JR 線、地下鉄銀座線、千代田線など、複数路線の利用可能。駅からはフラットアプローチで旅行客にとって移動しやすい歩行動線。上野駅からは成田空港、羽田空港へのアクセスも良好だ。
北側の「FOREST」、南側の「CULTURE」のエリアのイメージをコンセプトに外観・客室をデザイン。北側は上野公園の木立を意識したデザイン、南側は伝統工芸やモノづくり文化を意識し、エイジング加工されたレンガの装飾デザインと、「FOREST」・「CULTURE」の特性を生かした外観デザインを施し、地域性溢れるホテルを目指した。
客室デザインは、不忍池の眺望を生かしつつ自然らしさを表現 。「FOREST SITE」と、クラフト感、工房部屋、文豪を意識したデザインを踏襲した「CULTURE SITE」の全 14 タイプを揃え、選ぶ楽しさを提供。客室の 7 割はファミリータイプとなっており、長期宿泊のための各種設備として、ミニキッチン、冷蔵庫、電子レンジ、ダイニングテーブル、さらにはベッド以外にもソファスペースや和室などを用意し、くつろぎのための空間を提供する。
1 階ロビー階には、ホテルラウンジとカフェスペースに加え、テレワークニーズを踏まえ、滞在時にビジネスの時間を快適に過ごせるシェアオフィス「WAW」を用意。「WAW」は宿泊者以外の来館者も利用可能だ。ロビー展示のアートワークは、ホテルの位置する仲町商店会にある「道明」の組紐や、アクリル樹脂加工の上野「toumei」の作品。地元の工房と共創し、街への理解を深める仕組みづくりを構築している。ロビー中央の中庭は、イベントなどで使用された植栽を再利用する「ロスプランツ」を採用しサステナブルな空間づくりだ。
上野恩賜公園の壮大な景色を楽しめる大浴場 不忍池の桜並木も一望
共用施設の注目は、上野恩賜公園の壮大な景色を楽しみながら、心地よさを感じる大浴場。不忍池に向いた開けた景色で、開放感を思う存分味わうことができる。
「&LOVER」は、『&Here TOKYO UENO』のホテルスタッフが自ら探し・発見した、周辺案内
コンテンツ。在日外国人スタッフが食べてほしい近隣でおすすめの「ファストフード店のメニュー」
や、文化や芸術が楽しめる「上野公園」、下町の風情が残る「商店街」など、ジャンルごとにオリジナリティある周辺情報資料や周辺マップを作成する。
なお、すでに複数のプロジェクトが進行中。『&Here OSAKA NAMBA(アンドヒア大阪難波)』2025 年 4 月開業予定、『&Here SHINJUKU(アンドヒア新宿)』2025 年 7 月開業予定、『&Here TOKYO ASAKUSA(アンドヒア東京浅草)』2026 年 1 月開業予定となっている。
■『&Here TOKYO UENO(アンドヒア東京上野)』概要
所 在 地:東京都台東区上野 2 丁目 11-18
交 通:JR「上野」駅徒歩 7 分、東京メトロ千代田線「湯島」駅徒歩2分 他
客 室 数:145 室
設 計:株式会社東急設計コンサルタント
施 工:積水ハウス株式会社、株式会社淺沼組(施工協力)
開 業 日:2024 年 3 月 15 日(金)
■「&Here」ブランドサイト:https://andherehotels.jp/
■「&Here TOKYO UENO」公式サイト:https://andherehotels.jp/tokyoueno/
なお、宿泊予約は堅調で、海外客が8割を占める。そのうち香港・台湾からが合わせて6割。宿泊料は、5万円台から7万円台が中心となっているが4人での利用を想定するとリーズナブルに感じる人も多いようだ。日鉄興和不動産としては、初のホテル事業でもあり稼働率は徐々に上げていく予定。当初は3割程度と想定しているが、予約は堅調のようだ。
不忍池が目の前という絶好のロケーションで、マンション事業も検討したようだが土地権利が借地権ということもありホテルで企画したとのこと。インバウンド需要の回復で当初予定よりも宿泊料金も上振れしており、事業性は高いという。
今後も上野、新宿、浅草、銀座といった都市型観光地の近隣エリアを狙っていくという。マンション立地としても人気のエリアだが、今後ホテル需要の高まりでこうした地域のマンション供給は、ますます難しくなりそうだ。