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フラット35融資の投資利用 知っておきたい問題点とリスク

都心の風景 ライフ&マネー
都心の風景

本来、居住用の住宅ローンであるフラット35を投資用に利用している可能性があることが問題になっています。5月7日の国土交通省での記者会見では、「投資目的であるのに「住む」と偽って融資を受けていたケース」について石井国土交通大臣から以下の発言がありました。

「フラット35は、本人または親族が自ら居住するための住宅の建設や取得等に対して融資するものでありまして、本来の目的を逸脱し、不動産投資目的に利用されていたとすれば遺憾であります。

このため、国土交通省から住宅金融支援機構に対しまして、不適正融資の疑いのある案件の事実関係の確認、不適正が確認された場合の適切な対応、不適正利用を防止する対策の強化を指示しているところであります。

現在、機構におきまして、債務者の居住の事実関係、投資目的の有無、実際の住宅購入価格等について調査中であると承知しております。

こうした調査によりまして、融資目的に係る違反や借入金額に係る不正等の事実が判明した場合には、一括返還を求めるなど、機構において適切な対処がなされるものと認識しております。」

以上、国土交通省ホームページより転載

またフラット35のホームページにも以下のように明記されています。

「第三者に賃貸する目的の物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、お借入れの全額を一括で返済していただく場合がありますのでご留意ください。」

住宅ローンを不動産投資目的で利用すると期限の利益の喪失事由となる

フラット35に限らず、住宅ローンは自ら居住するための融資として一定期間返済しなくて良いという期限の利益を利用者が受けています。通常、金銭消費貸借契約には第三者への賃貸借の制限などの条項が入っています。

今回、問題になっているように自ら居住するための融資であるフラット35を不動産投資目的で利用した場合、契約内容の違反や契約内容の偽りにあたる場合があり例えば元利均等の35年返済といった期限の利益の喪失事由になります。

期限の利益を喪失した場合、金融機関から一括返済を求められたり金利の高い投資用のローンへの切り替えを求められたりします。スルガ銀行の不正融資問題もあり、投資用ローンの審査は厳しくなっているので、融資を切り替えるのは容易ではないでしょう。

2件目をフラット35で購入、住宅ローンが残る1件目を賃貸するのも問題

マンション購入の際に、買い増しや買い替えをするケースがあります。通常は、住宅ローンは1件しか利用できないので、買い替えの場合は従前の住宅を売却する必要があります。但し、新たな住宅を引き渡しを受ける前に売却するのであればその間に賃貸に住む必要があるので、一定の資金力がある方は、売却(おおよそ1年以内)を前提に2つの住宅ローンを組めるケースもあります。

通常の金融機関の場合、売却が完了した際に登記事項証明書などの証拠を金融機関に提出することが求められます。

フラット35を利用して新たに住宅を購入する際には、機構が定める年収負担率(年収400万円以上だと35%)を満たせば審査で通るケースもあります。この場合、フラット35は新たな自宅として利用するため機構としては従前の住宅ローンの完済は、融資条件にならないようです。

しかし、この場合も元々融資した金融機関の融資条項に違反するため該当すれば一括返済もしくは投資用のローンの切り替えが求められます。金融機関では、こうしたケースを防ぐため定期的に融資案件の確認を行っているようです(投資用のローンに切り替えている場合や元々投資用のローンを組んでいる場合は問題ありません)。

賃貸中(オーナーチェンジ)で売却すると、売値が大幅に下るリスクも

住宅ローンで購入したマンションを賃貸していて一括返済を求められた場合、売却することが一番の選択肢となるでしょう。しかし住宅ローンが利用できる実需タイプのマンションを賃貸中で売却するのは容易ではありません。

居住用でと投資用では、求める要素が異なります。投資用ローンの融資金利を仮に3%とすると、表面利回りが4%程度のマンションであれば管理費や固定資産税の維持費を考えるとほとんどインカムゲインがありません。仮に5%の表面利回りを投資家が求めるとすると20%も価格が低くなります。

人気マンションの中には、賃貸中で保有したのち退出後に居住したいというニーズもあるかも知れませんが、レアなケースでしょう。

それでは、賃貸人に退出をお願いするのはどうでしょうか?。賃貸借期間が定められている定期借家契約ではなく、普通賃貸借契約を結んだ場合に売却は退去事由にあたりません。よって立退料を払ってお願いすることになります。

筆者は、こうした業務に携わる方に「立ち退きをお願いする場合、最大で賃料の2年分かかる」と聞いたことがあります。月々の家賃が20万円とすると2年分なら総額480万円。これでも賃貸中(オーナーチェンジ)で売るよりは高くなるかも知れません。

転勤などの仕方がない事情がある場合は、配慮してもらえることもあるので金融機関に相談してみるのも大切かと思います。

また、既に住宅ローン利用のマンションを賃貸されている方は、売却を検討してみるのも一考かも知れません。マンション価格の上昇で、良質な賃貸中(オーナーチェンジ)のマンションは市場に少なくなっています。

相続対策で融資を利用せずに購入する方もいるようです。まずは、信頼できる不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。

【編集後記】

上記のようなリスクを理解しているので、不動産の知識に精通した不動産業者なら住宅ローンを使って賃貸するようなアドバイスは通常しないでしょう。しかし、不動投資物件の売買は一般的な仲介では早々出会わないので、不動産関連の仕事に携わる方でもよく理解できていない人が多いのも事実です。

「街とマンションのトレンド情報局」では、こうした「不動産投資」のテーマにも今後取り組んでいきたいと思います。