(初回公開日 2019年6月17日)将来が読みにくい今、誰しもが住まいの購入で後悔したくないと思っています。とはいえ、いざ探してみると購入したいと思える住まいに出会えないのも事実。気に入った物件に出会っても、すぐに申込が入ってしまうことも。じっくり検討したい一方で、不動産の購入には早い決断が求められます。
初めての住まいの購入の際には、住まいに関する一定の知識があったとしても決断するのに躊躇することも。多くの住宅を見てきた筆者も初めての購入の際には、いろんな視点で購入の可否を検討しました。その際に、ファイナンシャルプランナーで、中小企業診断士で、不動産コンサルタントであることは少なからず役に立ちました。
住宅購入で失敗しないしないためにどんな視点が大切かを押さえていきましょう。
後悔しないために押さえたいポイントは、返せる?貸せる?売れる?の3つ
まず一つ目は、無理なく住宅ローンを返済できるかどうかということです。住まいを住宅ローンを利用して購入すると、ローンの返済が始まります。家計のやりくりに余裕がなく、月々の支払に窮しているようでは大変です。傷病などで収入が減ることもあるので、ある程度余裕を持って返せることが大切でしょう。
資金計画を立てる際に、一定の余裕資金を残して置くことが重要です。毎月の出費を30万円程度とするならば最低半年分、200万円程度の資金は残しましょう。また子供の教育資金の準備も重要です。大学などへの進学の際には、奨学金や教育ローンを利用するという方法もありますが塾や稽古事の費用も相応にかかります。お子さんが小さくても教育資金が増えることは想定しておきましょう。
また、固定資産税な修繕費などの維持費がかかることも押さえたいポイントです。特にマンションの場合、管理費や修繕積立金、駐車場代などがかなりかかります。毎月の返済額が家賃並みであってもこうしたコストを考慮しないと家計は厳しくなります。
また、築年数の古い中古マンションは大規模修繕の為に一時金がかかるケースもあるのでよく確認しましょう。新築マンションの場合は、将来の修繕積立金の額を把握する為に、長期修繕計画をチェックしましょう。
2つ目はいくらぐらいで貸せるかということです。サラリーマン世帯の転勤によって一定期間賃貸に出すことは、よくあるケースです。しかし転勤したからといって、住宅ローンの支払いは止まりません。住宅ローンは、居住者向けのローンですが転勤などやむをえない場合は賃貸に出すこともOKの場合が多いです。
転勤が多く、家族で引越す可能性の高い方は、ある程度貸しやすい住宅形態のほうが安心です。貸しやすい住宅か、いくらぐらいで貸すことができるかはよく把握しておきましょう。また、貸す可能性が少ない人にとっても賃料相場を調べることは有益です。賃料は資産性の一つの目安になりますので、価格の判断のモノサシになるでしょう。
3つ目は、購入を検討している住宅が売りやすいかどうかという点です。例えば、新築マンションを買うならそのエリアの築年数の浅いマンションがどのくらいの価格で売れているのかは確認したいポイントです。今なら販売履歴や価格査定のサイトもあるので、近隣の中古相場は押さえておきましょう。
戸建て住宅なら土地のみの価格がいくらであるかは重要です。中でも60平米前後の狭い敷地に建つ新築の狭小住宅は総額が比較的リーズナブルであったとしても、土地持ち分が小さいため案外建物価格の割合が高かったりします。更地の場合の価格はある程度把握しておきましょう。
購入した住宅が「20年後に半値」になったとしても後悔しませんか?
住まいを購入する際に後悔しないポイントとして、長期的な視点で購入することをお薦めします。短期的な視点で購入してしまうとどうしても資産価値に目が行きがちです。確かに大きな買い物ですから資産性も重要ですが、案外売るタイミングは選べないものです。
リーマンショック後や東日本大震災後のブランド立地やタワーマンション価格の下落は急でした。想定外のことが今後起こらないとは言い切れません。また、資産価格が上昇しているエリアに家を持っている方の中にも、同じエリアの住宅が上昇してしまって住み替えのハードルが上がっているケースもあります。
また、金融商品取引法によって株の損失補填が出来ないように、住宅の資産価値が大幅に下がったとしても誰かが補償してくれるわけではありません。後悔しないためには、万が一住宅価格が大幅に下がったとしてもいいと思える納得感が必要だと思います。
購入時と比べ、20年経つと家族構成やライフステージも大きく変っているでしょう。仮に35歳の方が30年ローン、固定金利1%(変らないと想定)で4000万円の住宅をフルローン4000万円を借り住まいを購入した場合、毎月の返済額は128,655円で20年後の残債は約1470万円。これなら、20年後に住宅の価格が半値の2000万円になったとしても資金が残ります。
毎月12万円程度賃料を払っている人なら、上記のケースなら買った住宅が20年で半値になったとしても大きな損はしていない計算になります。実は、筆者も住まいを購入する際にシミュレーションで20年後に半値になっても大きな損にならないことに気づき、購入に踏み切りました。20年後に半値になっても住みたいと思える人生がプラスになる住宅なら前向きに検討しても良いのではないでしょうか。
筆者は、ファイナンシャルプランナーでもあり中小企業診断士でもありますが、家計と経営は似ている部分がありそれはキャッシュフローとバランスシートが重要ということ。上記のケースでは、バランスシート上の負債4000万円が20年後に1470万円に減り、仮に資産価格4000万円が2000万円に下がったとしても530万円純資産が増えていることを示しています。
そこまで行くためには、月々の返済を含めた毎月のキャッシュフローが重要。収入に見合った返済額の住宅を買うことはとても大切なことです。将来を予測することは難しいものですが、住み続けたいのに売却せざるを得なくならないように資金計画は立てたいものです。
【編集後記】
数年前に京都を訪ねた際、「方丈記」で有名な鴨長明の「方丈庵」を再現したものを見学しました。災害が多かった時代、大きな家は失うと損失も大きい。持ち運びも出来るようなつくりだったようです。誰もがもっとを求めるものですが収入や資産背景のバランスも重要です。京都の龍安寺に徳川光圀が寄贈したとされる「つくばい」には、「吾唯足知」の文字が。「ワレタダタルオシル」。これからの時代を生き抜くのに大切な視点かもしれません。
【3月13日追記】
新型コロナウィルスは、経済活動を停滞させ東証リート指数の下落など、不動産価格にも影響を与えています。市場リスクは、どんな不動産でも避けられません。転売目的ではなく堅実な買い方をした方が、こういう時期を乗り切れるのではないでしょうか。
また、余裕資金を残しつつ50代半ばまでで住宅ローンを完済できるようなら将来の不安も抑えられます。その為には、早期の購入が重要でこうした時期でも自分にとって価値ある住まいを探し続けるのが大切なのではないでしょうか。