東京建物は、2022年6月9日(木)から7月8日(金)までの間、東京建物が開発した大規模複合ビル「大手町タワー」(東京都千代田区大手町1-5-5、2014年竣工)内に位置する「大手町の森」にて、落合陽一氏が手掛ける立体的メディアアート作品「nullの木漏れ日」(Sunbeam of null in forest)の展示を行う。
「nullの木漏れ日」(Sunbeam of null in forest) は、3Dホログラム(3D Phantom®)を活用したメディアアートで、落合氏が創作のテーマにしている「デジタルネイチャー(計算機自然)」というビジョンをもとに「大手町の森」をインスタレーション作品(作品を単体としてではなく、展示する環境と有機的に関連づけることによって構想し、その総体を一つの芸術的空間として呈示すること)にしている。同作品は木漏れ日と計算機自然の間の探求から生まれた。「デジタルネイチャー」とは、「コンピュータと自然が親和することで再構築される新たな自然環境」として捉えられる世界像を表しており、「大手町の森」に風景を変換する作品を展示する。
「nullの木漏れ日」(Sunbeam of null in forest) は、空即是色色即是空と言われるように,デジタルによって物質性と離れて生まれる木漏れ日と,デジタルによって突如として生じうる可能性の関係を惹起するメディアアートになっている。
今回の期間限定のイベントの大きな目的は、「大手町の森」の認知向上を目指してのこと。落合陽一とのコラボレーションで、都心のなかの本物の森の良さを多くの人に知ってもらうという狙いがある。コンピューターと自然との親和によって「大手町の森」を五感で体感しデジタルネイチャーを体験してもらうという意図だ。
中野セントラルパークや東京スクエアガーデンなど緑地空間を設けた都市開発に実績のある東京建物の都市と自然の再生を目指した「大手町タワー」の開発。敷地全体の3分の1を「大手町の森」として緑地を再生している。「大手町の森」は、約3,600㎡におよぶ「本物の森」。本物の森を再現することに先立ち、千葉県君津市で大手町の人工地盤などの環境を創造したプレフォレストを千葉県に構築。3年にわたるさまざまな検証を実施したうえで、多くの土壌や植物を君津から大手町へ輸送・移植して森を再生した。
整備効果として、生態ネットワークの形成、ヒートアイランド現象の緩和、水の循環利用を達成している。皇居の森の近くに大きな森ができることで、ツグミ、シジュウカラなどが行き交う拠点としての機能が持てた。また、開発前に比べ平均気温が敷地内で1.7度低下。また、土壌で雨水を一時貯留できることで豪雨の対策にもなっている。
「大手町の森」は一般的なオフィスビルの足元に見られる緑地帯とは異なる、緑地の集約配置、一般動線との分離、様々な樹種の混交といった工夫により、現在では近隣に位置する皇居や神田川との生態ネットワークを形成するに至っている。例えば、植物類は当初の計画時の117種から2021年は208種の生息が確認されている。さらに、昆虫の種類の増加が見られ、タカ、ハヤブサ、タヌキなどが視認されるなど、多様な生態系が形成されている。なお、周辺の緑地と鳥類の生息を比べると樹林環境を好むヒヨドリやメジロといった鳥類が多く見られ生物多様性にも寄与している。
今後は、生態系を保全と緑地と人とのコミュニケーションのバランスをとったうえで積極的にイベントなどを開催する予定だ。
「null」とはデータが入っていない状態とのことだという。落合陽一いわく、「座ってぼぉっと見てほしい」とのこと。時間帯は、日中がおすすめとのことだ。
何かと忙しい日常の中で、心の安らぎが得られるかもしれない。東京駅を訪ねたついでに、大手町の森を訪ねてみてはいかがだろうか。